パスカル・ギリスはベルギー王国の首都ブリュッセルに生まれ、父は管楽器奏者、妹もヴァイオリニストという音楽一家に育ちました。冷戦下での軍役を終えた後、クレモナ国際ヴァイオリン製作学校において名工フランチェスコ・ビソロッティに弦楽器製作を学び、その後、フランス・ミルクールの工房で修行しました。1985年にベルギーに戻り、ブリュッセル市内に弦楽器の修復と販売を行うショップ「メテニー」を開設。以来、市内外のプレーヤーを相手にオールドヴァイオリンの修復や調整を行なってきました。特にサウンド・アジャストメントに精通し、演奏家からも高い評価を得ています。1996年にはVSA(ヴァイオリン・ソサエティ・オブ・アメリカ)が主催する製作コンクールにヴィオラを出展。「音響賞」を受賞しました。
ブリュッセルにおいて一流の製作家として名声を獲得していたパスカルですが、2000年ごろから量産楽器メーカーの依頼を受け、アドバイザーとして助言や技術供与を行うことになりました。後年、そのメーカーとの関わりは解消されますが、この件を機に普及価格帯の楽器製作にも興味を持つようになります。そして、弟のフィリップ・ギリスの協力を得て、ブリュッセル郊外ディール川沿いの街ルヴァン・ラ・ヌーヴに製作工房を開設。若手の職人たちと共に工房製楽器の製作を行う一方、自身がボディを製作し、フィリップがニスを施したマスターモデル「ギリス・フレーレ(ギリス兄弟の意)」の製作も行なっています。
フィリップ・ギリスはパスカルの実弟で、幼少よりチェロの演奏を学びました。アンティーク家具の修復の仕事をした後、パスカルの工房に加わり、その知識と経験を生かして全ての楽器のニス塗り、アンティーキング(オールド風仕上げ)を担当しています。熟練の技術と様々な道具を駆使し、品位ある美しい仕上げを実現しています。
ヴァイオリン「ギリス・フレーレ」ガルネリモデル
希望小売価格 ¥1,800,000 +税
パスカルがボディを製作し、フィリップがニスを施した合作のマスターモデルがこのヴァイオリン「ギリス・フレーレ」です。ガルネリ・デル・ジェスの1742年の名器「ロード・ウィルトン」をモデルとした作品で、オリジナルに模して左右非対称(アシンメトリック)に製作されており、ガルネリの楽器の特徴を良く表現しています。ただしパスカルの楽器製作の哲学は、有名な楽器を単純にコピー(模倣)するのではなく、自分なりに消化してプレーヤーの求める新作ヴァイオリンに仕上げることであり、細かな部分までオリジナルを再現するわけではありません。この考え方は、工房製の楽器を含めて一貫しており、パスカルとフィリップが生み出す全ての楽器に共通した特徴となっています。
ヴィオラ「ギリス・フレーレ」ゴフリラーモデル
希望小売価格 ¥2,000,000 +税
パスカルがボディを製作し、フィリップがニスを施した合作のマスターモデルのヴィオラです。カザルスがそのチェロを使用したことで著名な18世紀のヴェネチアの製作家「マテオ・ゴフリラー」が製作したヴィオラをモデルとしています。ヴェネチア派の父と呼ばれ個性的なプロポーションの楽器を製作したゴフリラー。その特徴をよく捉え自分たちの作品として完成させています。
ボディサイズが40.5cmと大きくも小さくもなく、程よいサイズであると共に、なだらかな肩のラインによりハイポジションでの演奏性も高く、さらに細めに仕上げられたネックにより手の小さいプレーヤーにも扱いやすいヴィオラとなっています。パスカルが求めるのは温かく渋く深みのある音色で、発音しやすいことも特徴です。
【工房製ヴァイオリンのご紹介】
パスカルとフィリップが生み出す工房製ヴァイオリン
「ディール・ノンアンティーク」
卓越した知見をもとに開発された良質の工房製ヴァイオリンです。
【こちら】の投稿で詳しくご紹介しています。
【楽器製作家が開発した楽弓】
パスカル・ギリスが監修して製作される楽弓「メテニー」
深い芸術への造詣から生み出される個性的な楽弓について、【こちら】の投稿で詳しくご紹介しています。
【弦楽器カタログ】
2020年1月に発行した「弦楽器カタログ」
パスカル・ギリスの製作する楽器について、各モデルが紹介されています。また、ロッコーマン取り扱いのその他の楽器や弓についても網羅しています。
【こちら】のページからダウンロードいただけます。