※2021年2月19日に公開した投稿ですが、2022年9月1日の価格改定に伴い、希望小売価格を変更しました。
チェロの入門者にとって、気持ちよく練習に付き合ってくれる「良い相棒」がいてくれたら、上達がもっと早くなるかも!
そんな想いから生まれたのが今回ご紹介するイエスタ社のチェロ「ゴア・ブース」です。「ゴア・ブース」は1710年にアントニオ・ストラディヴァリが製作した有名なチェロの名前。大富豪ロスチャイルドも所有した最も美しいストラディヴァリと称されるチェロをモデルに、日本のプレーヤーの皆さまに楽しんで使ってもらえるよう様々な工夫を凝らしました。
- ヨーロッパ産の材料を使用
品格のある響き、豊かな音色を実現するために欠かせない要素、それがヨーロッパ産の材料です。表板用のスプルース材、裏板や横板用のメイプル材には、ともにヨーロッパ産の材料を使用しています。 - 熟練の職人による手工製作
材料と同じように音にとって大事な要素は、できるだけ多くの工程を職人が手作業で行うことです。機械を使わないことで、材料それぞれの堅さや個性を感じながら製作でき、音質の向上につながります。 - フランス人職人直伝の上質なニス
イエスタ社が誇るニスの技術。美しい質感と陰影は、創業当時に技術指導を行ったフランス人職人からの直伝です。 - 日本人職人によるセットアップと最終調整
音と同じくらい重要な「弾きやすさ」を実現するため、ペグ合わせや指板削りなどを日本において熟練の職人が行い、丹念なセットアップを施しています。
アントニオ・ストラディヴァリ「ゴア・ブース」について
「ゴア・ブース」はストラディヴァリによって1710年に製作されました。知られているうち最も古い所有者が政治家でアマチュア演奏家だったロバート・ゴア=ブース(1805 – 1876)で、その後ウィーンのロスチャイルド家が購入しました。不幸にして1938年にナチスにより強奪され、第二次世界大戦後に返還されたのち売却されます。その後、所有者を転々としましたが1978年にスイス在住の演奏家ロッコ・フィリッピーニが購入し、現在も所有しています。世界的鑑定家のチャールズ・ベアーが「同等のものは存在しない」と評したと言われ、ストラディヴァリが製作した中で最も美しいチェロとされています。
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ストラディヴァリは1707年に初めて「forma B」と記された型でチェロを製作し、同じ型を使って「ゴア・ブース」も製作したと考えられています。現存する最古のチェロを16世紀に製作したアンドレア・アマティ以来、チェロは現在のものに比べかなり大型でしたが、ストラディヴァリが「forma B」を生み出し、私たちが普段目にする“普通のチェロ”に最も近いアウトラインを完成させました。1700年前後はバロック音楽の発展により弦楽器、特にチェロに対してより高度な演奏を求める風潮が強まり、多くの製作家(ゴフリラー、ガリアーノなど)がチェロの小型化に取り組んでいましたが、ストラディヴァリの「forma B」で製作されたチェロは、その中でも最も完成度の高いモデルだと考えられています。同じ型で製作されたチェロで有名なものとして、ロストロポーヴィチが30年以上愛用した「デュポール」があります。
〈参考文献〉
Alessandra Barabaschi, “1710 STRADIVARI CELLO” The Strad, vol.127 no.1516 (August 2016): p.38-43.
「イエスタ社」とオーナーの劉芃について
劉氏は清朝の重臣の末裔として生まれましたが、ヴァイオリン演奏の道に進みドイツに留学、室内楽や古楽を学びました。留学先のカールスルーエ音楽大学の教授の依頼で、故郷の北京から楽器を取り寄せたのがきっかけで、楽器製作に関わることを決意。フランス人製作家を北京に招聘し、設立した自身の工房で十数名の職人とともに製作をスタートさせました。北京の職人たちを指導し基礎を築いたフランス人製作家は数年後に工房を去りますが、現在も創業メンバーの熟練の職人たちを中心に少数精鋭で製作を続けています。創業は1996年、月間の製作本数は60〜80本で、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、そして古楽器を製作しています。劉氏自身はカールスルーエに倉庫とオフィスを構え、ヨーロッパ各国に良質の弦楽器や古楽器を供給するハブとして活動しています。
【弦楽器カタログ】
2020年1月に発行した「弦楽器カタログ」
イエスタ社に依頼し製作したヴァイオリンやヴィオラについてもご紹介しています。
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